社会のIT化は簡単でない

 社会のIT化が進められている。社会の、という意味は、マイナンバーカードのような国民全体を対象とする官主導でのIT化だ。だが、うまく行くとは思えないし、実際にもうまく行っていない。これは、企業でIT化を進めるような場合とは、決定的な違いがあるからだ。決定的な違いとは、全成員に行きわたることは絶対にない、とうことだ。特に日本のような、IT以前のインフラが整ってしまっている国では。

 企業であれば、紙ベースの承認を止めてワークフローを導入すれば、一夜にしてすべてが置き換わる。というか、すべてを置き換えることができる。それで一本化が達成される。しかし、国の場合は、すべてが置き換わらないどころか、大量の落ちこぼれが生じる。経済的に、能力的に、あるいは意欲の問題で、新しいITを使えない人が大量に生じる。それらの人をどうするのか。無理やり使わせるのか、追いつくの待つのか(50年かかるだろう)、後回しにするのか、置き去りにするのか。

 いずれにしても、一本化などできない、効率化など達成されない。もちろん、IT化の利益を皆が享受することはできない。それどころか、ますますデジタル・ディバイドを広げるだけになる。と偉そうなことを書いたが、自分にも名案はない。たぶん、誰にもないだろう。